電影書架

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21. 冠(白騎士と主)

 寒い冬の夜だった。
 両親はいつものように公演のため不在。
 この時季は、クリスマスコンサートやら、ニューイヤーコンサートやらでワールドワイドに各地を転々としている。
 年が明けて、一段落した頃にならないと帰ってこないのは毎年のことだった。
 寂しくないとは言わないが、慣れてもいる。
 それに、今は……自分ひとりではないのだから。
 呼べば応えてくれるものたちがいる。
 それは、随分と奏の心を強くした。
 カーテンを開けて空を見上げれば、今日は満月。
 綺麗な真円を描く銀の月が、地上の明かりを笑うように皓々と耀いている。
 満月の光は、煌天のカグヅチと同じ。
 元に戻ったはずの世界で、戻ることのなかった自分自身。
 姿形こそ人間のようであるが、悪魔の力はこの身に健在であり、力を引き出したマガタマの能力が魂に喰い込むように息衝いている。
 だからおそらく、いずれこの常識に塗れた表の社会に別れを告げる日は来るのだろう。
 それまでは、人と悪魔の半々の生活を謳歌していくのも悪くない。
 そんなふうに。
 どこか気分が高揚しているのは、満月のせい。
 奏は小さく笑って、思いついたことを実践するべく一旦自分の部屋に行くと、コートなどの防寒具を腕にかけ、次いで玄関から靴を取ってくるとベランダに続く窓を開ける。
 真神家は高層マンションの上階にあるため、地上より風が強い。
 奏は、コートを着て靴を履くと風に煽られる髪を押さえながら、外に出た。
 窓をきちんと閉め直し、それなりの広さがあるベランダを見回して。
 深呼吸を一つ。
 意識を集中し、呼びかける。
 そうして、奏が召喚のための呪文と、名前を唇に乗せたとき。
 空気を揺らす振動。
 一瞬で、空間を裂いて顕れ出たのは……
「なに用だ、我が主よ」
 いくつもの目が首から胴にかけてついている純白の馬。
 黒衣を纏い、弓を担いだしゃれこうべが恭しく問いかけてくる。
 奏に忠誠を誓った悪魔の一人、魔人ホワイトライダー。
「久しぶりね、白騎士」
「そうだろうか……人の感覚は、よくわからん。俺たちの時は、あまりに緩慢だからな」
「相変わらず、つれないのね」
「性分だ……どうやら、何かことがあって俺を呼び出したわけではないようだが?」
「うん、まぁ、ね……ちょっとした思いつきなの。月が綺麗だから、冬の夜空を空中散歩したいなぁって」
 ダメ?と上目遣いに見れば、魔人は大仰に溜息をついてみせた。
「そのような用件ならば、大天使たちを呼べば良いではないか。あやつらならば、喜んでそなたの頼みを聞いてくれよう」
 予想通りの言葉に、奏は苦笑いする。
 仲魔の中でも、この魔人との付き合いはそれなりに長いほうだが、相変わらず固いというかなんと言うか……砕けたところがちっともないのが、気に入ってもいた。
「確かにミカエルとか、ウリエルだったら簡単にOKしてくれるかもしれないけど……抱っこされながらって言うのは、ちょっと、遠慮したいかな」
 大天使以外にも飛行能力のある仲魔はいるが、巨大な蝿の姿では、論外だろう。
 それに。
「白騎士とこの子が、一番速いんだもの」
 言いながら、白馬の頸を撫でてやると、言葉がわかるのか気を良くしたように、小さく嘶いた。
「ねぇ、ダメかな?」
「…………仕方あるまい」
 あからさまにやむを得ずといった風情で頷くと、ホワイトライダーは骨ばかりの手を差し出してきた。
 奏は、にっこりと微笑んで彼の手を取り、導かれるままに白馬に騎乗する。
 コートの上から、黒衣に包み込まれたと思ったら白馬は天高く飛翔していた。
「わぁ」
 眼下に見下ろす東京の夜景は美しく、感慨深く奏の目に飛び込んできた。
 頬に当たる風は冷たいし、寄りかかるホワイトライダーの身体も決して温かくはないけれど、上機嫌で感嘆の声を漏らす。
 身体を包み込む黒衣が、魔人の気遣いだとわかっていたから。
 幼子のように目をきらきらさせている自分に、何を思ったのだろう。
 ホワイトライダーが、軽い溜息を吐いた。
「白騎士?」
「いや……主は、本当に変わり者だと思っただけだ。そなたは悪魔だが、いまだその心は人間のまま。で、あるのに我らのような異形に恐れる気配もなく、懐く始末。悠久に近い時を生きたが、そなたのような悪魔も人間も俺は他に知らぬ」
 遠い何かを語るような口調に、奏は首を傾げて。
「怖くなんかないわ。だって白騎士もみんなも、私の大事な仲魔よ?大事なものに姿や形は関係ないもの」
 骨の面に指を伸ばし、手袋越しにそっと撫でる。
 指先にホワイトライダーの困惑が伝わってくるが、見上げたしゃれこうべから感情を窺い知ることはできず……
 やがて彼は、高々と笑い出した。
「私、何か変なこと言った?」
「いや……我らは類稀なる主を見つけたと思うただけよ」
 くつくつと笑い続けるホワイトライダーの頭上に頂いた冠が、月光を弾いて光る。
 それを綺麗だと思いながら、奏も、忠実な白騎士の言葉にいつしか満面の笑みを浮かべていた。



あとがき

ホワイトライダー大好き。一番最初に作った魔人で、かなり長いことパーティに入れていたので思い入れも深いです。最終的にレベルが80台まで行きました。

  • 2012/02/15 (水) 05:44
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