作品
08 肩(イグゼルドvエア)
「イグゼルド、今日も頑張ろうねっ」
支度を整え、自ら造った武器を手にエアが笑う。
イグゼルドのマスターは、今日も無駄に元気だ。
ゴウラを封印する術を探しつつ、武器の材料を集めるために奔走する。
クリーフ村に来てからの、それがイグゼルドの日常だった。
だから。
「了解シタ」
いつものように頷けば、エアもまた、うんと大きく頷いた。
思えば、この見習い鍛冶師の護衛獣になったのは、誰がどう見ても成り行きである。
本来の召喚主を失ったイグゼルドは、俗に言う『はぐれ召喚獣』となり、エア曰くかつて彼女の家があった辺りで、行き倒れていた。
支援型機械兵士であるにもかかわらず、やむをえなかったとは言え、近接戦闘なぞをやらかしたせいだったのだが。
クリーフ村にはぐれ召喚獣は入れない。
けれども、イグゼルドの損傷はエアの機械音痴も手伝って、自己修復ではどうにもならないことは明白で。
結果、鍛冶師にとって必要不可欠(であるらしい)、護衛獣になるということで落ち着いたのだ。
両者合意の上で落ち着いた形とは言っても、そもそも正式な誓約さえしていない。
人間風に言えば、ただの口約束すぎないのだ。
なのに。
イグゼルドは、エアを『護るべき者』として認識している。
それはプログラムによって制御されている機械兵士には、本来ありえないことであるはずなのに。
納得している自身が、既に不可解だ。
「どうしたの、イグゼルド。考え事?」
エアが小さく首を傾げて、イグゼルドを見上げてくる。
華奢な少女だ、と今更のように思った。
15歳だといっていたが、イグゼルドの中のデータベースによると、人間のその年頃の少女にしてはやや小柄で、女性としての成長も未発達のようだ。
それに15歳といえば、身体は成長を始めるが、まだ充分子供といってもいい年齢だ。
本来は、庇護されるべき存在。
そうであるべきなのに。
エアに課せられたものは重い。
魔刃使いである、それだけで。
彼女には、村を守り、ゴウラを封印するという宿命を背負わなければならなかった。
そんな重いものを背負うには、あまりにも細い肩。
イグゼルドが力を込めれば、容易く握り潰せてしまいそうだ。
理不尽だ。
意味は知っていても、合理的な思考をするようプログラミングされている機械兵士の自分には理解できないと思っていた言葉だ。
けれど、今確かに思う。
エアの置かれている状況は、理不尽そのものだ。
しかし、イグゼルドのマスターはその状況に果敢に立ち向かっている。
課せられた使命にも、今は道を違えている親友にも。
ひょっとしたら。
ありえない思考が、イグゼルドのなかに弾き出された。
ひょっとしたら、自分はエア・コルトハーツという少女に出会うために、リィンバウムにやってきたのかもしれない。
彼女を守り、助けとなるために。
だとしたら。
彼女に対する、理解できない思考の数々も納得できる。
エアが、自分の真のマスターたるべき人間であるなら。
そもそも機械とは、人のために作られしもの。
今のロレイラルでは意味のないことだが、すべての機械の根幹に確かに息衝いている。
「ねぇ、イグゼルドってば」
「あるじヨ」
「なあに」
「貴方ニハ私ガツイテイル。ダカラ、何モ案ズルコトハナイ!!」
胸を張ってそう言うと、少女は一瞬きょとんとした表情でイグゼルドを見上げて。
けれども次の瞬間には、嬉しそうな満面の笑みを浮かべた。
「うん。頼りにしているからね、イグゼルド!」
笑顔。
機械兵士である自分には縁のないはずのもの。
エアの笑顔をもっと見たいと。
やはりありえない希求が、イグゼルドの人格を形成する電子回路の奥で目覚める。
「マカセテオケ!」
彼女の肩に圧し掛かるものを、共に背負うために、自分は世界を超えてここにいるのだと、鋼鉄の護衛獣は、確信していた。
※
『サモンナイト・クラフトソード物語2』より。
機械兵士は本当に私の萌えツボどきゅんな存在ですな。
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