作品
01 まつげ(史青・R18)
目を開けると、そこは見慣れた天井だった。
自宅の寝室、どうやら寝台の上に横になっているらしい。
そう気付いて、史鋭慶が身を起こそうとすると、それを鋭く遮る声があった。
「寝てなきゃダメだっ」
聞き覚えはもちろんある……けれども、あまりに切羽詰った声音。
「青樺?」
史鋭慶の身体を寝台に押し戻す恋人の顔は、泣き腫らしたそれだった。
目は潤んで紅く充血し、瞼は腫れぼったい。
痛々しいその表情に、胸を衝かれて、そっと頬に手を伸ばす。
青樺はその手を取って、自ら頬を手のひらに押し付けてきた。
「……心配したんだからな」
切なげに囁かれた言葉に、史鋭慶は我が身になにがあったのか思い出す。
皇子を王として迎え、新しい朝廷が整ってしばらく経つ。
史鋭慶も、王の補佐として仕えているが、かつて陳王高の右腕であった過去は消せない。
遺恨か、それとも存在そのものを邪魔に思ってか……刺客が送り込まれてくることは珍しくなかった。
宮城からの帰り道、暗闇に紛れて刺客に襲われた。
幸い青樺の先見の能力のおかげで、用心しての帰路だったため不意打ちにはならずに済んだ。
だが……最後の悪足掻きか絶命する寸前、刺客は青樺を標的として捕らえた。
咄嗟に刺客と青樺の間に割り込んで……腹に感じた痛みというよりは、熱い衝撃。
自分を名を狂ったように呼ぶ、青樺の声。
「あともう少しずれてたら……命が危なかったって……俺、すごく怖かったんだぞ……史鋭慶が死んだらどうしようって……」
声を震わせながら言い募る合間にも、青樺の目尻がポロリと涙が零れ落ち、とめどなく頬を伝い始める。
「すまなかった」
「謝るなよ……バカ……俺をっ……俺を庇ってくれたんじゃないか……でも、……俺……死ぬから。っく……もし史鋭慶が死んだら、俺も死ぬから……っ」
嗚咽交じりに切々と告げられる頼りない声が、史鋭慶の耳に心地好く響く。
まつげにさえも涙を滴らせて泣く恋人が、愛しくて仕方なかった。
そっと抱き寄せると、抗うことなく横たわった史鋭慶に顔を寄せてくる。
まつげに溜まった涙を吸い取るように唇を押し付け、馬鹿を言うな……と囁いた。
「だったら……だったら、俺を置いて絶対死ぬな。逝くなら俺も連れていって……」
怪我をしている史鋭慶の身体に負担にならないようにだろう。
控えめに縋りついてくる恋人を腕の中に閉じ込めて。
「……あぁ、必ず」
幸福に眩暈を覚えながら、そう囁いた。
※
史鋭慶と青樺は純愛ルートにしろ陵辱ルートにしろ依存度が高いところが萌えです(笑)。
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