作品
05 腹筋(クー主)
ベッドが、ぎしりと音を立てる。
その振動に目を覚ました奏が瞼を開けると、上半身を起こした忠実な恋人の姿があった。
窓から差し込む朝陽に、艶やかな黒髪が光を弾き、女性と見紛うほどの端正な面立ちを際立たせている光景に奏はうっとりと吐息を漏らす。
「お越ししてしまいましたか、カナタ様」
こちらに気付いた恋人が、申し訳なさそうに奏の顔を覗き込む。
すると、肩から長い髪がさらさらと零れて、それがまたなんとも言えず美しかった。
ケルトの英雄・クー・フーリン。
奏の仲魔にして、恋人。
「おはよう、クー」
「おはようございます」
朝から眼福の心地で、奏もベッドの上に身体を起こした。
白い肌の上に、悪魔の証である刺青は這っていないが、その代わりにクー・フーリンがつけたいくつもの愛咬の痕がある。
回復魔法を使えばあっという間に治せてしまうだろうそれを、奏は特に必要がない限りはそのままにしていた。
触れ合うだけのおはようのキスを交わして。
奏は、今更のように気付いた事実をしみじみと口にした。
「クーって、意外と逞しいんだね……」
平素はあまり意識しないが、朝の光に照らされたクー・フーリンの体躯はかなりしっかりと筋肉がついている。
しかもそれがマッチョ……という感じではなく、ミケランジェロのダビテ像のよう無駄も過分もないしなやかさだ。
「それは一応……騎士ですので」
感心する奏に、クー・フーリンとしては苦笑するしかないだろう。
「そっか……そうだよね。鎧着てても優雅だから、つい忘れちゃうけど……ね、ね……触ってみてもいい」
「どうぞ。この身はあなた様に捧げたものですので、ご自由に」
おねだりに、恋人は当然のように頷く。
許しを得て奏は、興味津々の風情で綺麗に割れた腹筋を指先で突付いてみた。
「……やっぱり硬い」
感嘆の声を上げつつ、しばらくの間好き勝手にクー・フーリンの上半身を撫で回していたのだが……
「ご無礼を」
と囁いて、彼は奏を膝の上に抱き上げてしまう。
「わっ……なに?」
「女性には、紳士的に……というのがモットーですが、私も男ですのでそのような振る舞いをされては、我慢できないこともあるのですよ」
特に、あなたが相手では……と。
甘い声が悪戯っぽく囁く。
クー・フーリンの下肢が再び欲望に兆しているのを感じて、頬に朱を上らせたけれど……魔性に転じて以来、すっかりと快楽に弱く正直になった奏は、にっこりと微笑んで。
「それじゃ、責任取らせてもらおっかな」
愛しい下僕の首に腕を絡ませて、唇を寄せていった。
※
クーの萌え所は騎士であることと、ヘタレ臭がぷんぷん漂っているところだと思います(キリッ)。なので基本紳士口調のクーが好きです。偉人口調のクーとか、交渉スキル・カリスマ持ってるクーとか実は笑ってしまうのですよ(酷っ)。
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