作品
09 足首(史青・R18)
しゃらり。
足元でなった金属の音に、青樺は褥の上でうっとりと微笑んだ。
華奢な足首を拘束する枷。
走ることができないように枷と枷を繋ぐ鎖。
青樺はそれに手を伸ばすと、指先に触れた冷たく硬い感触に満足気な溜息を漏らす。
この戒めは史鋭慶によって施されたもの。
胸と下肢の銀環だけでは足りなくなったか、ある日これを携えてきた。
そのときの彼の昏く切羽詰った眼差しを思い出すと、なんとも言えず満たされた心地になる。
森の中、閉ざされた屋敷の中での生活にもうどれだけの歳月が流れたのか、青樺は覚えていない。
幾つもの季節の巡りを見送り、二人きりの淫蕩で爛れた生活を過ごして……史鋭慶はただひたすらに青樺を失うことを恐れるようになった。
離れたりしない、逃げたりしない……何度となく誓った言葉も、彼に安心を与えることはなかったのだ。
そのことを空しいとは思わないし、切なくも感じない。
むしろ悦びを覚えた。
屈折し、歪んだ悦びを。
史鋭慶には自分しかいないのだ、そう実感できるから。
今はまだ、支配の証を穿ち、枷で束縛することで心の均衡を保っている。けれどそのうち、手足の腱を断ち、目を抉り、喉を潰す……そんな凶行に及ぶ日が来ないとは言い切れない。
その日を青樺は心待ちにしていた。
史鋭慶が青樺を戒めようとすればするほど、彼は青樺に溺れていく……戒められ、囚われていくのは彼のほうなのだ。
青樺はそれを望んでいる。
(壊れたのは史鋭慶じゃない……俺のほうだ)
己の望みを他者が聞いたなら、きっと眉を潜めるだろう。
おまえは狂っていると糾弾するだろう。
だが、これこそが二人が行き着くことを望んだ幸福なのだ。
物音がして、史鋭慶が寝所に戻ってきたことを知る。
薄物の帳を開けて、寝台に上がってくる彼に青樺は極上の笑みを見せる。
強請るように腕を伸ばすと縋りつくように抱きしめられた。
「お帰り、史鋭慶」
生活に必要な荷を受け取るために離れるわずかな時間すら、男の精神を磨耗させるのだ。
彼を出迎え、腕の中に招きいれながら指先で髪を労わるように梳いてやる。
「…………青樺」
求める声に、頬擦りで返して青樺は願う。
一日も早く、一瞬でも早く……史鋭慶の全てが青樺だけになることを。
それだけが、壊れた青樺の中で唯一つの純粋な気持ちなのだから。
※
史青に限ったことではないですが陵辱ルートは黒青樺が書けて非常に楽しい限りです。ヤンデレってキャラによりますが青樺のヤンデレ化は臨むところなので!
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