作品
6,横からこっそり(沖千)
しとしとと雨の音がする昼下がり。
こんな日は昼間であってもずいぶんと身体が楽だ。
雪村の隠れ里、その湧き水の効果か血を求める発作の回数は少しずつ間隔が空くようになったと感じるものの、まだ太陽の光の下で動くのは辛い。
雨や雲が分厚く空を覆っている日は、日中も活動できる数少ない日である。
刀の手入れを終えた沖田が視線を巡らせた先で、千鶴がせっせと手を動かしていた。
こちらに背を向けているので、何か縫い物をしているのだろうといういうことしかわからない。
沖田はふと悪戯心を起こして、千鶴の肩に顎を乗せるような形で背中から彼女の手元を覗き込んだ。
「総司さん、危ないですよ」
くすくすと笑いながら、けれども手の動きは止めずにいる。
「……それ、僕の?」
見るからに女物とするには不似合いな柄や色味の生地。
しかも沖田の好みに合わせたかのような代物だ。
彼女はちょっとだけ手を止めて、大切なもののように生地を撫でた。
「はい。総司さんに似合いそうな生地だったので早く仕立てようかと」
うきうきと幸せそうな顔で笑う、その表情、その姿が愛おしくて。
そっと肩に手を起き、首を伸ばして横から唇の端を狙ってくちづけた。
「……っ!」
軽く触れて離れたそれに、千鶴は面白いくらい真っ赤になる。
それがあまりにも可愛らしかったので、声を上げて笑った沖田に千鶴が憤然と抗議してきた。
「そ、総司さんっ、針とか刃物を持っているときにこういうことは危ないからしないでくださいって、何度言えばわかってもらえるんですか!」
不意打ちが恥ずかしいだけ。
そんなことはもちろん沖田も承知の上だ。
正式な祝言こそ上げてはいないものの、この地で夫婦同然に暮らしているのに、千鶴はいつまでも初々しい。
そのもの慣れなさが愛しさを掻き立てるのだと、彼女こそ何故いつまでも理解しないのだろう。
「ごめんね。でも、君が愛しくてつい身体が動いてしまうんだよ」
紅く色づいた耳元に甘く囁きかけてやれば、愛しい妻は口を噤んで羞恥に身を縮こませてしまった。
そうなることは予想済み。
確信犯の沖田は、募る愛しさのまま千鶴の頬に再び唇を寄せたのだった。
※
公式ではとかくエンディング後の儚さがくどいほど断定されている沖田ですが(平助もだけど)、キャラメールとか読んでる限りではとても労咳患ってるとは思えないほど生き生きしてるので(笑)、短命なのは抗いようがなくても本人たちが思ってるより長生きできるんじゃ……と思わずにはいられません。
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