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7,紳士ですから(公花)

「公瑾さんって集団で絡んでくる女の人は苦手だって言ってましたけど、実際そうされても対応が優しいですよね。悪く言えば押しが弱いってことですけど」
 花が唇を尖らせてそう言うと、公瑾は心外だとでも言わんばかりに器用に片方の眉を跳ね上げた。
「どんなにしつこくされても、怒鳴り散らすこととかないし、冷たい声で追い払うわけでもないし」
 公瑾は花が玄徳などを誉めたりすると、一方的に拗ねたりするのだが、彼だって玄徳のことは言えないと思うのだ。
 彼の物腰は穏やかであり、丁寧で紳士的と言っていい。
 容姿はいいし、地位や家柄も然り。
 それでもてないわけかないのだ。
 この楊州において若い娘たちの憧れを一心に集めているらしいと言うのは誇張でも何でもないらしい。
 伝え聞く噂ばかりではなく、位の高い官吏の娘や裕福な商家の娘などが城勤めの侍女として出仕することで公瑾と接点を得ようとし、あわよくば彼の目に留まろうとしているのを花は事実として知っている。
 彼女らの親も、楊州で一・二を争う若手の出世頭を婿にできればと手ぐすね引いて娘を後押しするという有様だ。 正妻は無理でも、第二夫人や愛妾でもかまわないと言う者が後を絶たないというのだから恐れ入る。
 積極的な彼女らは現代風に言うなら間違いなく肉食系。
 群がられる公瑾自身も大変だがとばっちりを受けるのは彼の恋人である花もなのだ。
 花が楊州に留まっているのは、尚香が玄徳に嫁ぐのと同様に同盟の強化をねらって伏龍と名高い玄徳軍の軍師であり師匠でもある孔明の……引いては玄徳の名代としてであり、名目上は賓客の扱いだから陰湿な態度を取られているわけではないけれど、それでも風当たりは酷く目の敵にされていることはありありと伝わってくる。
 つい先ほどの出来事を思い出して花は我知らず身震いした。
 いつものように公瑾が侍女たちに囲まれている場面に出くわしたのが運の尽き。
 公瑾はこれ幸いと花をダシにして、その場からの逃走を図ったのだが……
(……視線で人が殺せるとしたら、きっとあんな感じだ。そりゃ、公瑾さんみたいな人の恋人になれたんだから、多少のやっかみは覚悟の上だけど、何で私ばっかり。公瑾さんの押しが弱いのもいけないんじゃないの?)
 そう考えるとなんだか面白くない気持ちがふつふつとこみ上げてくる。
「苦手だって言うくせに、あの人たちには当たりが柔らかいし」
 グチグチと口をついて出る言葉。
 恨みがましく見上げた先で、年上の恋人は肩を竦めた。
「私があなたに優しくないとでも?」
「……そう言う訳じゃないですけど……意地悪したり強引だったりすることの方が多いじゃないですか」
 そう言うと公瑾はうっすらと微笑んだ。
 普段の胡散臭さ紙一重の張り付いた笑みではなく、どことなく楽しげな……人の悪い微笑。
「人として他者に礼を持って接するのは当然のこと。そこに男女の区別はありませんよ。ですが私はあなたの前では人であるよりただの男ですので、男としては恋人に対してワガママになるのも、強引になるのもいた仕方ないことかと思いますが」
「…………なんだかとっても理不尽な気がします」
「それだけあなたを愛しているということですよ」
 諦めなさい、などとつらっとした顔で言ってのけ、腕を伸ばして花を抱き寄せる。
 臆面のない言葉に真っ赤になった花だけれど、唇を寄せてくる恋人から逃れる術はない。
 くちづけを受け入れるように、公瑾の衣をきゅっと握りしめ……どれほど紳士的な振る舞いをする人でも、恋人と二人きりになってしまえば容易に狼へと豹変するものなのだと思い知ることになるのだった。


※

恋戦記をプレイし終わった後友人への感想メールで『恋戦記にはダメな大人とズルイ大人しかおらん』って書いたのですが、我ながら上手いこと言ったなと思ってます(笑)。公瑾はダメな方の大人ね。

  • 2011/06/01 (水) 04:52

タグ:[10のキスの仕方]

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