作品
8,まぶたに(ライコノ・R18)
隣の寝台でライが飛び起きる気配がした。
コノエは寝返りを打つ。
ゆっくりと身を起こすと闇の中、眼帯に覆われた右目を押さえ、全てを拒絶するように身体を固くしている姿が白く浮かび上がっている。
「…………ライ」
ひっそりと名を呼ぶと、彼ははっとしたようにコノエのほうに顔を向けた。
「……起こしたか?」
苦悶を滲ませた問いかけに、コノエは首を横に振ることで答える。
本当はしばらく前から目が覚めていた。
それほど酷くライは魘されていたから。
「すまん」
「気にするなよ。お互い様だろ」
そう、お互い様だ。
今夜とは逆に、コノエが悪夢に魘されて飛び起きることもある。
ライの中に潜む闇が。
コノエの中に横たわる虚ろが。
二人から安らかな眠りを遠ざけ、夜に苛むのだ。
辛いけれど忌むべきことではない。
二人が共に生きると決めた以上、互いに切り離せないことだから。
一人ならば耐えられない。
だが、二人なら。
それを実感し、確かめることで、乗り越え癒されていくものだと知っている。
コノエは自分の使っていた寝台を降り、ライの方へ向かった。
そうして、彼の寝台に上がり、自分よりもずっと大きな身体を腕の中に抱きしめる。
夜目にも和えかに光って見える白銀の髪に頬を寄せ、あるいは鼻先を埋めて薄く喉を鳴らした。
労わるように肩や背中を撫で、想いをぬくもりに変えて伝える。
何があっても傍にいる。
自分にはライが必要なのだと。
ライが欲しいときに与えられなかっただろうものを、尽きることのない想いで与えるために自分はここにいるのだと。
やがてライの身体から強張りが解け、呼吸も落ち着いてきた。
コノエの背に腕を回し、尻尾を絡めあうようにするその仕種が、ライなりの甘え方なのだと気付いたときの言葉にできない気持ちが今も忘れられない。
とても静かなのに、とても熱くて、心にひたひたと満ちた甘く狂おしい衝動を。
コノエはライから僅かに身を離して、いつもは見上げている薄い青の隻眼を見下ろした。
綺麗な色。
まるで夜空に佇む陰の月の青い光を集めたようだと思う。
コノエにとって、この世で最も愛しい色だ。
微笑みかけると、ライは眩しいものでも見たように目を眇めて、そして途方に暮れたような表情をする。
言いたくても言えない、そんな子供みたいな表情を。
「ライ」
自分にだけ、こんな弱さを見せてくれるつがいの彼が愛しくて愛しくて。
コノエは想いを声に乗せるように彼の名を呼び、眼帯に覆われた右目の瞼にそっとくちづけを落としたのだった。
※
ライコノは心置きなくバカップルにかけるので楽しいです。恋人同士であり、師弟であり、相棒でもある……コノエがエンディング後も戦う猫なのもいい。
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