作品
9,振り向きざま(仲花)
「うわー、見て見て仲謀、すっごく可愛いよぅ」
庭園の隅に歓声が響く。
声の主である花はとろけそうな顔をして地面にしゃがみ込み、まだ目が開いたばかりだろうと思しき子猫たちを見つめていた。
母猫の姿はないが、おそらく餌を取りにでも行っているのかもしれない。
「はぅ、可愛い~、ねえ、触ったらだめかな」
「止めとけよ。人間の匂いが付いてたら母親が警戒するかもしれねぇだろ」
今にも手を伸ばしそうなのを制すると、花は素直に聞き入れた。
「……そだね。でも、もうちょっと見ててもいい?」
「好きにしろ」
「うん」
少し距離を置いてニィニィ鳴いてる子猫たちに熱い視線を送るのを、仲謀は言葉にしがたい想いを抱えながら見下ろす。
可愛いを連発する花だけれど。
(……可愛いのはおまえだ、バカ)
大きな目をキラキラさせて、頬を紅潮させてのふにゃふにゃの笑顔は、頭から食べてしまいたいくらいだ。
どれくらいそうしていたのか。
ようやく気が済んだらしい花が仲謀を振り仰ぐ。
その表情がまた、あんまりにも可愛いものだから。
辛抱たまらなくなった。
何かがぷつっと音を立てて切れるのを感じながら、仲謀は行動を起こすことにした。
振り向いた花に覆い被さる。
きょとんとした顔も可愛いと思いながら。
美味しそうに色づいた唇に自分のそれを押しつけたのだった。
※
恋戦記の同年代キャラはいずれも恋愛においては歳相応で好感が持てます(笑)。仲謀はヘタレというより不憫な子ですね。そこが弄り甲斐がある。
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