作品
02 月も待たずに、キスをして(DDS3・ウリエル主)
午後の選択授業が自習になった奏は屋上へ出た。
違う科目を選択している勇や千晶には授業があるし、十二月の寒空にそんなところに付き合ってくれる級友はいない。
もちろん奏はそれを見越してこの場所を選んだのである。
一見すると人間と変わらない。
けれども悪魔の身体を持つ今の奏には、寒暖などあまり関係ない。
感じはするけれど、人間ほど敏感ではなく病を得るわけでもないから無頓着だ。
校内で最も人気がなく、一人になれてそこそこ広い場所を選んだ結果が屋上だっただけのこと。
『召喚』を行うにはやはりそれなりのスペースが必要なのだ。
意識を研ぎ澄ませて、まずは目くらましの結界を張る。これから行うことも、その結果出現する異形の姿も見られるわけにはいかない。
それから小さく召喚のための呪文を唱えた。
名を呼ぶだけでも可能だが、それは有無を言わせぬ強制であり契約の鎖を力いっぱい引っ張る行為と同じなので緊急時以外は、スタンダードで穏便な召喚方法を使う。
力の強いものがむやみにその力を振り回すような行為は控えなければいけない。
呪文に答えて光が方陣を描く。次の瞬間には空間を震わせながら、白い翼が顕現した。
美しい蜜色の髪。金色の虹彩を持つ青い瞳。透き通るほどに蒼褪めた肌を持つ奏の忠実な恋人。
「お召しにより、ウリエル参上いたしました」
コンクリートの上に膝をつき、奏の手の甲に恭しく口付ける。
「ご命令を」
「そんなに畏まんなくていいよ、ウリエル。ただ会いたかっただけなんだから」
「それはそれは、光栄です」
ウリエルが顔を上げて微笑む。
「ここは、学校……ですね。勉学のほうはよろしいのですか?」
「うん。午後の授業お休みになっちゃったんだ。それでね……」
奏は、一応羽織ってきたコートのポケットを探り何枚かのポストカードを取り出して恋人に見せた。
「これは……」
「友達が行って来た展覧会のお土産にってくれたの。その展覧会はキスをテーマにした絵画を展示してたんだって」
だからそのお土産のポストカードもテーマに見合ったものだ。
額、頬、そして唇。
愛しげに。
それでいて淫靡に。
美しいいくつものキスの情景。
「これを見てたらウリエルとキスをしたくなったの。少しでも早く」
学校が終わるのなんて待っていられない。
夜が来るまで待っていられない。
「…………駄目、かな?」
節操がないと、呆れられてしまうだろうか。
見上げると、ウリエルはにっこりと笑顔を浮かべた。
「とんでもない。そういうことでしたら喜んで……カナタ様」
手のひらが奏の頬を包み込み、端整な顔が近付いてくる。
重なる唇。
求めていたキス。
大きな純白の翼で覆い隠された秘め事を奏は心行くまで堪能した。
end
DDS3からはお初のウリ主です。
クーは本当に紳士だけど、ウリは紳士面してるだけだと思います。
それでいいのか大天使……(苦笑)。
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