作品
03 息をひそめて、微笑んで(咎狗の血・シキアキED3 R18)
警護をしている人間の制止を振り切ってアキラは寝室を出た。
だがこの『城』の中でアキラの行動を止めることが出来るのはたった一人だけだ。
そのたった一人以外がいくら咎めたところで意味はない。
途中すれ違った人間たちが何人かいたが、それも気に止めることなく目的地を目指した。
重厚な扉。
その脇を固めていた衛士たちもアキラの姿を認めてぎょっとするが、そんなものは視界に入らない。なんとか思いとどまらせようとする彼らの声に聞く耳など持たず、伸ばした手で扉を開けた。
何事かと室内の空気がはっと緊張したのが伝わってきたが、闖入者がアキラだとわかるとまた違った意味の緊張が走る。ただ一人アキラの探し人だけが、革張りの椅子に腰掛けて悠然としていた。
アキラはその紅い瞳に微笑みかけてこの『城』の主であるシキのもとに歩み寄る。
「まったく、おまえは……大人しく待っていることも出来んのか」
呆れたような、それでいて面白そうな声音にアキラを咎める響きはない。
アキラはまるで子供のように唇を尖らせて、情人の膝の上に腰を下ろした。
執務室の中にいた部下たちの息を呑む気配。
麻薬組織・ヴィスキオの『王』であり、果てのない暴力と恐怖でニホンを支配しているシキに対してこのような暴挙が許されるのはアキラだけだろう。
「だって退屈だよ……せっかくシキがいるのに、全然構ってもらえないんだから。こんなつまんないことばっかりしてないで、俺と遊ぼう?」
ここしばらくシキが遠征に出るような事態は起きていないが、その分これまで滞っていた仕事を行うべく執務室に篭りきりでアキラのことをちっとも構ってくれないのだ。曲がりなりにもニホンを統治している立場のシキにはやるべきことはたくさんあるらしい。だが、そんな理屈はアキラにはどうでも良かった。夜になれば寝室に引き上げてくるが書類片手になんて我慢できるものではない。
男の形を模した淫具を秘蕾につっこまれ、無機質な振動に苛まれながら情人の冷たい美貌を見つめることに飽いてしまった。ときどきはそういう趣向も悪くないけど、悪戯したわけでもないのにいつまでもその扱いは納得できない。
体温なんてないかのようなシキの、熱い欲望をこの身体に受け入れたい。
激しすぎる情動に苛まれ死んでしまいそうな快楽を与えてくれるのは彼だけなのだから。
「ねぇ、これ以上我慢なんてさせないでよ。シキ、遊ぼ?」
シキの首に腕を回し、囁きかけながら形の良い耳を舐った。
男をその気にさせるべく下肢を摺り寄せ、淫らがましく腰を使う。
なにを想像したのか部下たちが目のやり場に困って視線を彷徨わせているのを感じた。
これで有能で屈強な精鋭だというのだから笑わせる。自分とシキの行為を表情一つ変えずに見届けるくらいの胆力と鉄面皮くらい身に付けられないものなのだろうか。
こんなだから、すぐにアキラの誘惑に陥落するのだ。
アキラは彼らに気付かれぬよう息を潜めてせせら笑った。
「仕方がないヤツだ」
アキラの内心を察したのだろう。
ふっと息を吐いてシキが唇を撓らせる。
その悪魔のような微笑みがアキラは好きだった。
「……下がれ」
控えていた部下たちにそう命じる。
彼らは何か言おうとしていたが、口ごもりそそくさと執務室を出て行った。
仕事はまだあるだろうに、シキが自分を優先してくれた。
優越感に胸が擽られ、アキラは情人の唇に掠めるだけのキスをしてその肩に額を擦りつけて甘える。
アキラの口の端が笑みを形作った。
うっとりとした、けれども淫靡な笑み。
これからここで行われる行為への期待はもちろん、先ほどの部下たちが明日からこの執務室を訪れる度にどんな妄想に取り憑かれるか想像すると愉しくてならないのだ。
「……シキぃ」
くすくすと笑いながら甘く名を呼んだアキラの唇に、情人が応えるみたいに己のそれを重ねてくる。次第に激しくなるくちづけに眩暈さえ覚えながら、二人だけの狂宴へと溺れていった。
end
シキアキはED3をチョイスしました。
ED3のシキアキは、ところ構わずエロモードに突入するのはデフォルトですよねー。
たぶん『城』内でえっちしてない場所は二人が足を踏み入れる必要のないところ(例・厨房)とかを除いてはないんじゃないかな。
『城』に使えている人間はいつだって目のやり場に困っていればいいと思います(超真剣)。
淫靡なアキラに翻弄される『城』内、そしてそれを面白おかしく眺めているシキ……天下無敵に迷惑く極まりないバカップルです。
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