作品
04 甘い声音で、ささやいて(ぷりプリ・カッツェ×クルト R18)
「ちょ、ちょっと待ってよ、カッツェさん」
夜。
二人きりの部屋。
甘い空気。
背後にはベッド。
この状況ですでに一線を越えた恋人同士が雪崩れ込むことといえば一つだろう。
今、まさにそうなる寸前で、はっと我に返ったクルトは恋人を押し留める。
これからたっぷりと逢瀬を堪能しようとしていたらしいカッツェはと言えば、表情にこそ出していないが黒くて長い尻尾が不機嫌そうにゆらゆら揺れていることが彼の感情を如実に知らしめていた。
性格からか、経験値の差からか……クルトがカッツェに勝てることなどなく、あれよあれよという間に行為に流されてしまうのだが、今日ばかりはそうはいかない。
カッツェとするそういうことが嫌いなわけではなく、むしろどちらかといえば好きなのだけれども、それでも今日こそは、という決意のもと恋人の金の瞳を見上げた。
「……カッツェさん、僕たちって恋人同士だよね?」
「そうだな」
だからこういうことをしているんだろう、と不埒な動きを仕掛ける手のひらから逃れるように身じろぐ。腕の中に囚われているのではたかが知れているが、それでもいつもの恥じらいからではない、断固とした拒否の姿勢。
それが伝わったのだろう。
カッツェは眉を寄せた。
訝しんでいるのではなく、機嫌が更に下降しているのが見て取れた。
でも、めげない。
「でも、僕、カッツェさんから好きだとか愛してるとか言われた覚えがないんだ」
「…………」
「いっつも、僕ばっかりだよね」
「…………」
「それってずるいと思うんだけど……」
そう訴えると、カッツェは呆れたように溜息をついた。
「なにを言うかと思えば、そんなことか。くだらない」
「くだらなくなんてないよ!」
むっとして言い返す。
その言い方はあんまりだ。
「言葉にするのは苦手だといっているだろう……その分態度で示してるだろうが」
「でも僕は聞きたいの!」
大事にしてくれているのはわかる。
家族から愛されて育ったクルトは、自分に注がれる愛情には敏感だ。
けれどそれは無意識の部分であって、クルトの周囲には態度はもちろんだけれど言葉にして気持ちを伝えてくれる人しかいなかった。
カッツェのように、態度に重きを置く人はいないのだ。
だから態度だけでは不安になってしまう。
カッツェがかっこよくて、素敵な人だととてもよくわかっているからこそ、不安になる。
(だってカッツェさん、前に男も女も守備範囲だって言ってた)
冗談めかしたその言葉は本当らしい。
今は自分のことを好きでいてくれるけれど、これから先は?
それにフェンリルの人たちは基本的に他国の人間と恋愛関係に陥ったりしない、自国内ですら他種族同士での恋愛は珍しいというお国柄なのだ。
他国の人間であり男である自分。
カッツェにお似合いな美人の猫族の女性が現れたりでもしたら、到底勝ち目はないと思ってしまう。
ありもしない未来とは言えない。
言葉を求めるのは子供だろうか?
それでもカッツェのことが大好きだから、少しでも確かなものが欲しいと思う。
誰かを特別に好きになったのは初めてで。
そうすることでしか愛されている自信を積み重ねることが出来ない。
「ダメ?」
自分の従者には効果覿面のおねだりビームを眼差しに乗せる。
聞きたい。
聞かせて欲しい。
大好きなカッツェの、一番好きだと思う声で『好き』と言われたら……それはどれだけ幸せなことだろう。
不安と期待の眼差しに、カッツェは再び溜息をついた。
やっぱり駄目なのだろうか。
唇を噛みかけたクルトの耳元に、そっと唇を寄せて……
「……………」
小さく囁かれた言葉。
「!」
ひっそりと、甘い響きの愛の言葉にみるみる視界が潤んだ。
「…………クルト」
望み通りしたのになぜ泣くのかと言いたげに名を呼ばれる。
蕩けそうなほど幸せな気分で笑み崩れたクルトは、カッツェの首に腕を伸ばして抱きついた。
「嬉しい……すごく嬉しい!カッツェさん、大好き!」
衒いもなく大好きと繰り返す。
あまりの喜びように困惑していたカッツェは、やがて肩を竦めた。
「そんなに喜ぶなら……たまにだったら言ってやる」
いかにも不承不承という感じだったけれど、それがまた嬉しくて。
降ってきたくちづけを今度は拒むことなく従順に受け入れたのだった。
end
『ぷりプリ』のカッツェ×クルトです。
ゲーム中で、クルトはカッツェの声のことをしきりに言っているのでこのお題にはふさわしかろうと選びました。
低くてかっこよくて大好きなんだそうです(笑)。
ゲーム中一押しCPであることはファーストインプレッションもプレイ後も変わりませんでした。
ところでCPとは関係ないですが、カッツェとヴィントは身長は一センチしか違わないのに体重が10キロも違うって……(ヴィントのほうが重い)。
筋肉のつき具合はそんなにかわらなさそうに見えるけど、あれは食べてるものの違いでしょうか。ヴィントは肉が好きで、カッツェは魚が好き。
実はプレイ中そこが一番気になって仕方がなかったのでした(苦笑)。
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