作品
キスにまつわる20の御題 : BL SIDE <R18>
1.ご挨拶 (咎狗)
紅い飛沫で全身を濡らしたまま、アキラは笑って主を出迎える。
うんしょ、と精一杯の力を込めて首のなくなった肉塊を自分の上から退かし、白刃を鞘にしまう男の首に腕を巻きつけた。
「お帰り、シキ」
寂しかった、と陶器のような白く滑らかな頬にくちづける。
その仕種に鮮血のような紅い瞳が、愛しげでありながらも、残酷な光を宿して細められ……アキラは身体の奥から湧きあがってくる疼きに、うっとりと微笑んだ。
※
シキアキED3。
基本の殺伐バカップルです。
2.肩越しに触れる (ラメント)
本日の寝床と定めた場所に落ち着いて、ライはコノエを抱き寄せる。
己の膝の間に座らせ、背中をぴたりと胸に預けさせる姿勢がライは特に気に入っていた。
何かと疲労を感じているときは、温かく愛しいものを抱くのが一番だ。
腕の中にすっぽりと収まる己の賛牙の身体は、まるで誂えたようにぴったりで。
腹の前で両手の指を組み、ちょうどいい高さにある肩に顎を乗せると、熟れた果実のように紅く染まっている頬が目に留まる。
いつまで経っても初々しい様が、好ましく愛しい。
その感情の赴くまま、美味しそうな色合いになった頬に唇を寄せると、腕の中のコノエは面白いくらいに耳も肩も尻尾も震わせた。
※
ライコノ。
肩越しにほっぺにちゅ。
3.腕を引く (咎狗)
「では、この書類を担当者に渡してまいります」
シキが処理した書類を確認し終えたアキラが、そう言って席を立った。
その横顔はどこまでもストイックであり、シキの腕の中にいるときのような鮮やかで蠱惑的な表情は微塵も伺えない。
もちろんそれは、アキラがそのように努めているからだとはわかっているが、シキにさえあれがまったくの同一人物か……と思わせるときがあるほどの公私の区別をつけた徹底振りだ。
だからこそ、その虚勢じみた拘りを突き崩してやりたくなるのだが。
「アキラ」
名を呼ばれ、忠実なる情人は足を止める。
シキは椅子から立ち上がり、その腕を引いた。
「総帥っ」
うろたえる声になど耳はかさない。
重ねた唇は抗議するみたいに頑なに閉じられていたけれど、それを抉じ開けさせるのもまた一興。
アキラの手から零れ落ちた書類の束が、床の上に乾いた音をたてて散らばった。
※
シキアキED2。
公私混同しないように頑張る秘書と、セクハラ三昧の総帥です。
10.仲直りのちゅー (帝国)
「だから、史鋭慶、ごめんってば」
眉尻を下げて謝ってみても、青樺の恋人はむっすりと押し黙ったままだ。
たまの休日。
官僚として忙しく働いている史鋭慶には本当に久しぶりの休日だったから、ゆっくり休ませてあげたいと思って一人で出かけたのが仇になった。
帰宅した青樺を出迎えたのは、置いてけぼりにされたことに憮然として腹を立てている恋人で。
まだ休日は残っているのに、臍を曲げたままの史鋭慶と過ごすなんて、青樺もいやだ。
恋人同士の甘い空気なんてのも、けっこうご無沙汰なのだからして、それを満喫したい。
「史鋭慶、ごめん。おまえがいるのに、もう一人で出かけて行ったりしないから……」
言いながら、ちゅっと引き結ばれたままの唇にくちづける。
俺のこと嫌いにならないで。
そう訴える眼差しに、噛み付かんばかりのくちづけの返礼。
独占欲が強くて、心配性で、超がつくほど過保護な恋人との仲直りは、やっぱりこれに限る……と、苦しいくらいに抱きしめて来る腕に幸福を感じながら青樺は思った。
※
史青。純愛ED後。
久しぶりに書いたら、青樺が史鋭慶をお尻に敷いてた(笑)。
やっぱり、この二人は大好き。
11.無理やり(ラメント)
羞恥心から反射的に嫌がる素振りを見せたコノエの態度に苛立ったように、ライは容赦なくくちづけてきた。
痛いくらいに顎を掴まれ、唇をこじ開けられ、咥内を舌で蹂躙される。
硬い音をさせながら互いの牙が不器用にぶつかり合うのも厭わずに。
口の中の弱いところを舐め回され、くぐもった吐息を零しながら、コノエも次第に積極的にライのくちづけに応え始めた。
(本当は嫌いじゃない。ライに強引にされるの……)
想い合う仲となった今でも、何かと読めないところのある連れ合いの感情が、判りやすく伝わってくる瞬間だから。
コノエを強く欲してくれている……それがわかって嬉しいから。
羞恥心が少しずつ薄れていく。
コノエは自分からもライを求めて、陶然としていく意識に従順に溺れていった。
※
ライコノ。
ライが相手なら、強引なのも嬉しいんですよ、コノエは(笑)。
13.背伸びをする (咎狗)
いつでも奪われてばかりじゃ悔しいから、たまにはアキラも自分から求めて見せたりすることもある。
本当にたまに。
その気になったアキラに、シキはちょっと驚いた顔をしながら、でもなんとなく機嫌がいい。
かつて車椅子に座って長い休息についていた彼にも、こっそりとくちづけたことがある。
そのときのキスは、屈みこんて、シキの端正な……でもまったく表情の浮かんでいない顔を覗き込むようにしながらで、満たされてはいたけれど、切なくもあった。
今は、彼の肩に手をかけ、ほんの少し背伸びをして、意地悪そうな表情で待つ唇にくちづけをすることができるのが嬉しいなんて絶対に口に出して伝えたりなんかしないけれど。
※
シキアキED1。
どんなシキとするキスもアキラにとっては大事だけど、幸せなのは『今』ということ。
15.初めて (咎狗)
今でも思い出すことがある。
トシマのあの部屋で、シキにくちづけをされたときの初めての記憶を。
ほんの一瞬。
触れて離れただけの記憶なのに。
その感触さえ曖昧で、あまりにも唐突で予期せぬ出来事だったから、夢か幻かのようにさえ思えるのに。
初めてのくちづけに驚き戸惑った、あの気持ちだけは……もう数え切れないほどくちづけを交わすようになった今でも、鮮明にアキラの胸に刻まれている。
※
シキアキ。たぶんED1。
大切な思い出。
16.何味? (ラメント)
そもそもライにとってのクィムはあれば食べるが、それほど好きな果実ではなかった。
自分の舌には甘すぎる……そう思っていたのに。
連れ合いのコノエが、その果実を大好きで、かなりの頻度で彼の唇や口の中はクィムの味がするものだから……今では、すっかりと好物になってしまったのはここだけの話である。
※
ライコノ。
クィム味のちゅーはお約束。
17.不意打ち (ラメント)
「…………コノエ」
悲哀の悪魔が、戸惑ったような顔をするのに、コノエはしてやったりの気分を味わった。
「だって、してみたくなったんだもん」
いつもされてばかりだから、たまには自分から。
胸を張って言うと、カルツは困ったみたいに、でもコノエが大好きな優しい笑顔を浮かべて笑う。
「困った子だ」
顎の下を擽る仕種に愛情を感じて、コノエは甘えてごろごろと喉を鳴らした。
※
カルコノ。
コノエの悪戯……というより奇襲?
18.弱み (ラメント)
リビカにとって尻尾も敏感な急所だが、耳もまた然り。
不用意に触られたくない場所ではある。
それなのに。
「やっ……ダメっ、……ライってば……もうっ!咬むな、齧るな、銜えるなーっ!」
尻尾を弄るのと同じくらい、耳で遊ぶのも好きな連れ合いには、まったく困ったものだ。
がう、と吼えてみたところで頬が真っ赤になっていては怒鳴る意味はないも同然なのだけれど。
※
ライコノ。
照れ隠しです。嬉しいくせに。
20.それは反則!! (ラメント)
どんな顔をしてるんだろう。
そう思ったのがきっかけだった。
くちづけに完全に意識を持っていかれるその前に、ライが今どんな顔をしているのか知りたい。
その衝動を抑え切れなくて、少しだけ薄く目を開けて、至近距離のライを確認する。
(…………!!)
心臓が、止まるかと思った。
そして、たぶん……コノエはこの先ライのくちづけは何があっても拒めないかもしれないと、思ってしまった。
だって。
コノエとのくちづけに没頭するライの顔が、あまりにも幸せそうだったから。
(……あんなカオしてるなんて、反則だ……)
見なきゃ良かった。
でも、嬉しかったのも本当だから、見て良かった。
複雑な感情でぐちゃぐちゃになる胸の内、ほかのことを考えているのがわかったみたいに、舌を軽く噛まれる。
どちらにしても。
きっと生涯忘れられない表情だと、そう思った。
※
ライコノ。
見えないからこそ、知りたくなるの。
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