庭球小説

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je t´aime ★ je t´aime

 かりかりかり。
 静かな室内に、シャープペンを走らせる音だけが響く。
 テスト週間に入り、活動休止となった部活のない放課後。
 ベッドの上で、心地好さげに午睡を楽しんでいる愛猫の手前、小さなテーブルを挟んだ向こうに真剣な顔で問題に取り組んでいる恋人の姿をリョーマはちらりと盗み見た。
 端整な顔立ちは、精悍さと繊細さを絶妙のバランスでもって合わせ持っている。
 すでに青年と言ってもおかしくない、それでもいまだ成長過程の身体は羨ましいくらい均整が取れていて。
 声は……甘いのに本人の性格を反映してか硬質に響くテノール。
 校内で、女子が『かっこいい』とうっとりしている場面に何度も出くわしたことがある。
(でも……部長は、かっこいいけど、どっちかって言うと『綺麗』って感じなんだよね)
 彼の容貌、佇まいは凛とした美しさで構成されていると思う。
「…………俺の顔に何かついているか?」
 いつの間にか、こっそり……ではなくあからさまに見つめていたのだろう。
 手塚が溜息をつきながらそう言ってこちらを見たので、リョーマは咄嗟にうまい言い訳を思いつけなかった。
 そうなっては彼に隠し事なんて出来た例はなく、見つめていた理由を正直に白状することになる。
「…………昼休みに女子が話してるのが聞こえたんだけど……好きな人の身体のパーツでどこが一番好きなのかって言う。それ、思い出してた」
 言いながら、リョーマは手塚の左腕を取って自分の方に伸ばし、シャープペンを抜き取って開かせた手のひらに、ちゅっと可愛らしくキスをして。
「俺は部長の身体で嫌いなとこなんてないんだけど、特にこの手が好きだなって思ったんだ」
 節ばった長い指を持つ、大きな手。
 触れたり、触れられたりすると、ものすごくいい気分になって落ち着く。
 そう言って勝気に微笑むと、手塚もわずかに表情を和ませてリョーマが握っているのとは逆の右手で頬に触れてきた。
「なら俺は、おまえの瞳が好きだ」
 テーブル越しに身体を伸ばして、反射的に目を閉じたリョーマの瞼にふわりと唇が触れて離れる。
「もちろん嫌いなところなんてないぞ」
 悪戯っぽく笑った恋人に、リョーマも笑い返して。
 やがてどちらからともなく顔を寄せ、それだけで蕩けそうに甘くて優しいキスをした。

                                  
END

  • 2011/05/31 (火) 14:51

タグ:[短編]

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